ニュースの概要
セブン‐イレブンは、北海道にちなんだ商品を打ち出す『北海道♡宣言』のスペシャルアンバサダーに、お笑いコンビ「錦鯉」の長谷川雅紀さんを起用した。発表はPR TIMESで公開されている。長谷川さんは2021年のM-1グランプリで王者となり、50歳での優勝が当時の最年長記録として話題になった人物である。明るい持ち味の人を前面に出し、店頭の季節企画を親しみやすく見せたいというねらいが読み取れる。本稿では起用の是非そのものよりも、同じ「錦鯉」の名を持つ観賞魚の世界から見て、この出来事から何が学べるのかを考えてみたい。
引用元: セブン‐イレブンの『北海道♡宣言』スペシャルアンバサダーに「錦鯉」の長谷川 雅紀さんを起用(PR TIMES)
分析・見解
芸人の錦鯉と観賞魚の錦鯉は検索画面で出会う
今回の発表を見て、魚の錦鯉を思い浮かべた人もいるだろう。同じ言葉が、お笑いコンビと観賞魚という二つの世界で使われている。検索窓に「錦鯉」と入れると、魚の飼い方や価格の情報と、芸人の出演情報が同じ画面に並ぶ。長谷川さんたちがM-1の王者になった2021年以降、この傾向は強まった。
魚の側から見れば、言葉に触れる人が増えたことは追い風である。ただし、芸人の話題を見た人が魚に関心を持つとは限らない。ここは冷静に分けて考えたい。
アンバサダーは商品の「入口」をつくる役目を担う
コンビニの棚で商品が選ばれる時間は短い。人気者の顔があれば、足を止めるきっかけになる。北海道という地域名には、すでに「おいしい」という印象がある。そこに親しみやすい人物が加わると、手に取る理由が二つ重なる。
ただし入口だけでは、二度目の購入は生まれない。繰り返し買われるかどうかは、味と価格で決まる。広告塔は扉を開けるが、店の中身までは作れない。観賞魚も同じで、話題で興味を持った人を迎える品質と説明が必要になる。
地域の名前が持つ力は育て方で差がつく
地域ブランドの成功例として、熊本県のくまモンがよく挙がる。県が使用の窓口を整え、多くの企業が商品に使えるようにしたことで、県産品の存在感が広がった。一人の人気者に頼るのではなく、誰でも参加しやすい仕組みを先に作った点が違いである。
今回の北海道の企画は、期間を区切って店頭で一斉に見せる形とみられる。短い期間に強く届く一方、終わると話題が薄れやすい。魚の錦鯉も、新潟県を中心に各地で個性を磨いてきた。名前の知名度は借り物でも、産地の物語は自前の資産になる。
話題が終わったあとに何を残すかが問われる
長谷川さんは50歳でM-1王者になり、遅咲きの成功として注目を集めた。その物語が人を引きつけたのは、本人の人柄と努力の道筋が見えたからだろう。商品でも産地でも、人物や地域の背景が語られると記憶に残る。
キャンペーンの価値は、期間中の売上だけでは測れない。終了後に残る客の記憶や、集まった情報の蓄積も成果である。観賞魚の業界が芸人の話題に乗るなら、競り市、養鯉場の見学、輸出の現場といった自前の物語を同時に見せたい。話題を受け止める場所が整っていれば、一時の注目が長い関心に変わる。
ビジネスへの影響
自社の名前と同じ言葉の話題を点検する
最初にやることは、自社の商品名や屋号と同じ言葉が、芸能やスポーツの話題で使われていないかの確認である。検索画面を月に一度見て、上位に何が出るかを記録するだけでよい。魚の錦鯉であれば、飼育や価格の情報より芸人の情報が上に出る日もある。そのとき、魚を探している人を迷わせない案内ページがあるかどうかが分かれ目になる。
担当者は、魚の写真と産地の説明を載せた短いページを用意し、見出しに「魚の錦鯉」と明記しておくとよい。
話題に乗るときの注意点と小さな始め方
著名人の名前や写真を許可なく広告に使うのは避ける。名前や肖像には財産的な価値が認められる場合があり、トラブルの元になる。便乗ではなく、「同じ名前の魚の世界を知ってもらう」という自社の言葉で語るのが安全である。
始め方は小さくてよい。SNSで一本の投稿を作り、養鯉場の見学案内や買い方の目安につなげる。外国から来る観光客向けに英語の案内を一行添えれば、費用をほとんどかけずに接点が増える。投稿から問い合わせまでの数を記録し、三か月後に続けるかを判断する。大きな予算をかける前に、反応の薄さも含めて確かめることが、意思決定者にとって最も安い学習になる。